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東京で携わっていたプロダクトデザインの仕事が、今の仕事を始める直接のきっかけになったのだとは思いますが、そもそもは幼い頃から見てきた実家の環境に大きく影響していると考えています。実家は農家で、口に入れる物はもちろん、簡単なテーブルや台、小屋等必要な物を父親が自分で作っていました。そのため、物の価値はお金額やデザインではなく、そのものが持つストーリー性、さらに言えばそのものにまつわる人との関わりによるところが大きいと、無意識に感じていたのだと思います。消費のためのものづくりではなく、もっと人やその人の生活に直接関われる関係でものづくりがしたい、漠然とではありますが、理想的なものづくりを求めて岡山で再スタートした時の気持ちです。そしてそれが、今でも大きなコンセプトになっています。
私たちは今、便利なものを簡単に安価で手に入れられることができるようになりました。しかし経済を優先した今の社会の中では、そのことがかえって物の価値観を混迷させているとも言えます。戦後の日本のものづくりは、経済成長を背景にしたメーカー主導型のものづくりが長く続いたため、生活の中で本当に必要かどうかと言うことよりも、消費を活性化して利益を上げることに傾倒してきました。そして生活者は消費者と言われ、便利さを理由に必要以上の消費を繰り返してきました。しかし残念ながら、便利さや物質的な豊かさを求めるだけでは、本当の意味での上質な生活を手に入れる事は出来ないことを私達は既に気づいています。経済的にも環境的にも大きな問題を抱える現在、私達は豊かさの価値観の方向性を見直し、本来のものと人との関係性を取り戻さなければいけない時がきているのだと、私は思っています。そして私の仕事がそのきっかけになることを、また、そのことで少しでも社会や人に貢献できることを願っています。

 

 

 

守屋 晴海 (Creative Director) HARUMI FINE CRAFT代表


profile and history

1981年岡山県立岡山工業高校工業デザイン化を卒業、岡山と東京で各種デザイン業務に携わる。大量生産、大量消費という構図の中でのものづくりに疑問を感じ、中央での仕事に終止符をうって、1996年岡山に帰省。本来のものづくりの在り方を改めて考えたいと思い、1996年職業訓練校の木工科に入校。翌年卒業と同時に、家具作りの仕事をスタート。1999年 数人のスタッフとともに、オリジナル家具工房ハルミファインクラフトを岡山市藤田に設立。オリジナルの家具だけではなく、イベントの企画やディレクションなど幅広い意味でのものづくりや仕組みづくりをプロデュースするデザインディレクターとして活動をする。2010年倉敷市東町にショールーム兼ショップとして、「倉敷フィント」をオープン。2012年倉敷市阿知町に林源十郎商店オープンと同時に、LIDEM倉敷(生活デザインミュージアム倉敷)を立ち上げる。現在は、倉敷に拠点を置きながら、様々なモノづくりのシーンで活動を続けている。